高齢化社会、核家族化による家族の形の変化に伴い、現状に沿った相続 が可能となるよう本年7月6日に民法改正が成立しました。 これによって、相続の仕組みが40年ぶりにかわります。
民法改正の主なポイントは、下記の5つとなります。
1. 配偶者居住権
2. 夫婦間の遺贈・贈与に関する持戻し除外
3. 預貯金の仮払い制度
4. 自筆証書遺言書の方式緩和と保管制度
5. 相続人以外の者への特別寄与料の請求
今回は、個別にその内容を解説いたします。
詳細については、私ども「岡山 相続お悩み相談室」にお問合せください。
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1. 配偶者居住権
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夫が死亡した際の妻の法定相続分は、子供がいる場合、夫の遺産の2分の1と民法で定められています。夫が残した財産が自宅のみという場合、自宅の処分代金の半分を受け取るということになりますが、そうなると妻が今まで暮らした自宅に住めなくなるということになり、妻の生活が保護されなくなります。 そのようなことにならないよう、今回の改正では、妻(配偶者)が自宅に住み続けることが可能となるよう「配偶者居住権」が創設されました。
この「配偶者居住権」には、相続開始から遺産分割協議が終了するまでの「配偶者短期居住権」と、遺産分割協議で定められた期限もしくは終身まで居住できる「配偶者居住権」の2つが定められました。
概要は、下図となります。
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2. 夫婦間の遺贈・贈与に関する持戻し除外
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改正前では、被相続人が生前、配偶者に対して自宅を贈与した場合でも、その自宅は、相続財産の先渡し(特別受益)がなされたものであるとして、配偶者の遺産分割の際、受け取ることのできる財産の総額からその部分(先渡し分)が減額となりました。そのため、被相続人が配偶者の生活が困らないようにと生前贈与しても、配偶者の受け取る財産の総額は、結果として、生前贈与をしない場合と変わりませんでした。 今回の改正では、婚姻期間が20年以上の夫婦間において、配偶者に対して自宅の遺贈または贈与がされた場合は、原則として、遺産分割を行う際の計算において、遺産の先渡しがなかったものとするように変更されました。 今回の改正により、自宅についての生前贈与を受けた場合は、配偶者は多くの相続財産を相続でき、安心した生活を送ることができるようになりました。
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3. 預貯金の仮払い制度
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改正前では、相続が発生した際、相続人が葬儀費用や債務の弁済などでお金が必要になった場合でも、相続人間で遺産分割協議が終了するまで、被相続人の預貯金は、払い戻しができない(いわゆる「相続財産の凍結」)という課題がありました。 今回の改正では、このような資金目的に対応できるように遺産分割前でも預貯金のうち一定の金額については、家庭裁判所の許可がなくても払い出せるようになりました。
具体的には、
「相続開始時の預貯金債権の3分の1に当該共同相続人の法定相続分を乗じた額については、単独で払戻しが可能となります。ただし、金融機関ごとに払戻し上限額が法務省令で定められます。」
<例>
亡くなった父親の預金300万円を、子供2名で相続する場合のひとりの子供が払い出せる金額の計算
300万円×1/3×1/2(法定相続割合)=50万円
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4. 自筆証書遺言書の方式緩和と保管制度の創設
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(1) 自筆遺言書の方式緩和
従来、全文自書が必要とされたものを、相続財産の目録方式を許容し、目録部分は、
自書不要とした。目録部分は、別途ワープロ等で作成し、本文部分のみを自書すれば足りることになります。
(2) 保管制度の創設
① 法務局を「遺言書保管所」とし、自筆証書遺言書を保管する機関とする。
② 遺言書保管所に保管されている遺言書は、開封時の検認が不要となります。法務局でおける保管申請時には、形式的な適合審査が行われ、開封時の検認が不要となります。
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5. 相続人以外の者への特別寄与料の請求
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従来、遺言書なない場合、相続人でない親族(子の配偶者、孫など)が、相続財産の分配を受けることはできませんでした。 今回の改正では、相続人ではない親族(「特別寄与者」といいます)が、被相続人に対して無償で療養介護を行い、そのことにより被相続人の財産の維持又は増加に貢献した場合は、相続人に対して、その寄与に応じた金銭の支払いを請求できることになりました。
(※)本件の内容、資料は、一部「政府広報オンライン」を使用させて頂いております。
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