高齢化社会になり、介護や認知症という問題が切実になってきました。
遺産相続をめぐるトラブルにおいても、この問題に関するトラブルが増えてきています。
親の介護問題。相続は均等に?
長男であるAさんの父親は80歳で、5年前に奥さんを亡くしてからというもの急に体が衰えてきて、要介護4の認定を受けました。
Aさんは父親と同居していますが、会社勤めをしているため普段から父親の世話は妻のBさんに任せきりでした。
Bさんは毎日、介護ヘルパーのようにAさんの父親の世話をしていました。
数年後、父親が亡くなり、Aさんは弟と妹を集め遺産相続の話し合いをすることになりました。
父親は遺言書を残していなかったので、遺産は兄弟三人が平等に1/3ずつ相続する権利があります。
しかし、父親の介護はもっぱらAさんの家が引き受けており、弟妹は全く関わっていませんでした。
Aさんは妻が介護で苦労している様子をずっと見ていましたし、介護に関する家計の負担もかなりのものであったため、自分は弟妹よりも多く遺産を相続してもいいはずだと考え伝えたところ、弟妹はそれに猛反対をしたのです。
法定相続分は法律で決められているものだから、もらう遺産が少なくなるのはおかしい。
同じ子どもなのに、兄だけいい目を見るのはずるい。
それが弟妹の言い分でした。
介護をずっとおこなってきたのはAさんとBさんであったことを伝え、弟妹は関わってこなかった事を指摘しても「長男だから親の面倒を見るのは当然だ」と主張し、トラブルになってしまいました。
いくら話し合っても結論が出なかったため、Aさんは弁護士に相談することにしました。
法定相続分に追加できる『特別な寄与分』について
弁護士に相談したところ、Aさんは法定相続分とは別に『寄与分』の財産をもらうことができる、という事を教えてもらいました。
寄与分とは、民法に規定されている制度で、被相続人の療養看護によって被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をした人は、相続分に寄与分を加えた額を相続分とすることができる、というものになります。
今回のケースの場合、被相続人である父親の介護をヘルパーに頼らずに長年続けてきたわけですから『被相続人の療養看護』に該当します。
これは、もし父親が介護ヘルパーを雇ったり施設に入ったりして、その費用を自分の財産から支出していたとすれば、父親の財産はその分減ってしまうことになります。
Aさん夫婦が自宅で介護し続けたことにより父親の財産は減らずに維持されていたため、Aさんは相続分に寄与分を加えた額を相続することが出来る、といったものになります。
<配偶者への特別の寄与は適用されません>
また、ここで説明した寄与分ですが、請求の権利は配偶者を除く法定相続人に限られています。
配偶者が除かれる理由としては、夫婦間には『協力扶助義務の履行』の規定があるため、特別の寄与にあたらない、と判断される場合があるからです。
上記のことを弟妹に話すと、2人は渋々ながら承諾しました。
しかし、寄与分の財産をいくらにするかは相続人同士の話し合いで決めることになっています。
Aさんは介護ヘルパーを雇っていたらいくらかかったかを計算して弟妹に示しましたが、2人は納得せず、家庭裁判所に話を持ち込んだ結果、双方の言い分を少しずつ抑える形で調停がなされ、決着したのでした。
今回ご紹介したケースも、遺言書があれば起こることのなかったトラブルです。
介護を必要とする身となった場合、誰にどのような配分で遺産を相続させるのかを遺言書に記していれば、相続人となる大切な家族間のトラブルを避けることが出来たかもしれません。
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